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「相手はこちらで探している。経歴や家格、容姿など、申し分のないオメガが数名すでにお前の結婚相手として候補にあがっている。だからその中で鈴蘭が気に入る人物を選べばいい」 結婚する当の本人が知らないところで、話は着々と進んでいた。 突然のその事実に、目の前がズンと暗くなった。 「選べばいいって……。僕、好きな人が」 鈴蘭が話す次の句を遮るように、父親の声が被さった。 「それが星崎のオメガの務めだ。星崎のオメガとして誇りを持ち、次の継承者を産みなさい」 呪いだ。 これはオメガとして生まれた自分にかかっている呪いだ。 急に、今いる離れ自体が呪わしい場所として感じられた。 いったい、今まで幾人のオメガ達がこの小さな洋館に閉じ込められ、次を継ぐオメガを生み育ててきたのだろう。 もう何を言っても父には通じない。 それが星崎を存続していく手立てだと信じきっている彼は、鈴蘭に卒業の祝いの言葉などひと言も述べることなく館を出て行ってしまった。
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