7

8/32
前へ
/194ページ
次へ
「どこで昼、食べていこうか……。おっと……、すごいなぁ」 並んで校門を出たところで誠悟が驚きの声をあげた。 通りには迎えの車がずらりと列をなしていた。 それは中学に上がる年まで鈴蘭には見慣れた光景だった。 裕福な家の生徒達は登校下校の際、公共機関など使うことなく送迎の車を使うのだ。 鈴蘭も小学六年生までは当たり前のようにそうしていたが、さすがに中学に上がり思春期になると登下校の自由時間を楽しむようになっていった。 小学部と中、高等部は別の場所に校舎を構えており、高校から入学してきた誠悟にとってこの光景は驚き以外の何者でもないようだった。 「すごいな。まるで住む世界が違うっていうか……」 路肩に寄せられた高級車の列を、誠悟は半分呆れたように見ながら足を進めた。 「鈴蘭」 その列の中に、伏見の姿があった。 「迎えに来ました。お父様がとても心配されていますよ」 父の命令で伏見が迎えに来たことに、きゅっと胸が苦しくなる。 心配するくらいなら息子の意思を尊重すべきであり、父親自ら迎えに来るべきだ。 鈴蘭は伏見を無視して、誠悟の腕を取り足を進めた。 「鈴蘭?」 誠悟が伏見を何度も振り返り、心配そうに鈴蘭を見た。 「いいんだ。行こう」 今は家のことなんか考えたくもない。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1988人が本棚に入れています
本棚に追加