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「俺は……、きっと運命の番だから鈴蘭を好きになったんだと思う……」
誰のことをも好きにならないと心に決めた誠悟のその本心。
それは鈴蘭が彼の運命の番であり、オメガに生まれたことへ意味を持たせた。
運命だから好きになったと、裏を返せば運命でなければ恋に落ちなかったという誠悟の告白。
なのに不思議と誠悟の言葉は悲しくなどない。
なのにこんなにも誠悟が悲しんでいることに鈴蘭も悲しくなる。
熱い涙が誠悟の唇を濡らしていた。
鈴蘭は引き寄せられるようにそこへ自分の唇を落とす。
涙のしょっぱい味がした。
誠悟の体の一部の味。
何度も鈴蘭がそこへ唇を押し当てると、ようよう誠悟は堅く結んだ口唇を緩めた。
「ん───」
開けて、と強請るように舌を這わせると、恐る恐る誠悟の唇は隙間を作った。
「誠悟、それでも好きだよ」
唇を離さないままそう呟き、誠悟の口腔へと舌を進めた。
舌先で誠悟の舌を擽ってやると、誠悟も僅かながら応えてくれる。
内臓同士が絡み合うような奇妙で扇情的な感覚に、何も考えられなくなるまで二人で溺れあった。
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