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きっと今まで誠悟は苦しかったのだろう。 鈴蘭と出会ったことは彼にとって喜びだけではなかったのだ。 鈴蘭を見るたび、彼は母親に捨てられたことを思い出したに違いない。 運命の番という存在を憎み続けた彼が、初めて知った自分の運命に逆らうことができなかったこと。 母親への憎しみ、憎い母親と同じように運命の番を愛してしまったことへの葛藤。 その全てを鈴蘭は愛したいと思った。 「誠悟、部屋はどこ?」 鈴蘭の問いに誠悟はまだ躊躇っている。 「お願い……。僕を、拒まないで」 「鈴蘭……、本当に……?」 ゆらゆら揺れる誠悟の瞳に、鈴蘭は頷いた。 二階に上がり誠悟の部屋へ入るなり、鈴蘭はシャツをさっさと脱ぎ捨てた。 「ちょっ、鈴蘭っ──」 誠悟は慌てて床に脱ぎ捨てた鈴蘭のシャツを拾おうとしたが、鈴蘭はその背にそっとしがみついた。 「今日、僕の全てを誠悟に知ってほしいんだ」 振り返った誠悟に、鈴蘭は首輪を外して見せた。 「誠悟になら、ここを噛まれてもかまわない」 すらりとしたひとつの傷もないうなじ。 鈴蘭は誠悟の目の前で髪をかきあげ、それを露わにした。
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