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「鈴蘭……、ごめん……!」
誠悟は謝りながら鈴蘭を押し倒した。
彼がなぜ謝っているのか、言わずとも伝わってくる。
好きだと言いながらも、心の奥底で『運命の番』を拒絶する気持ちが誠悟にあったこと。
運命の番という本能が求める存在をどこか卑しいものとして誠悟が認識していたこと。
そして誠悟の中にその本能があり、それを拒絶する強さを持っていなかったこと。
そして運命の番を厭い憎む気持ちを持ちながら、鈴蘭の誘いを撥ねつける理性が彼の中で消え去ろうとしていることへの謝罪だった。
誠悟の瞳があの色に変わる。
鈴蘭がどうしてももう一度見たかったあのアルファの色に。
「はっ……!ああっ……!」
鈴蘭の身体の内側から、誠悟に誘われるように灯り始めた発情の火。
一瞬、鈴蘭にも、誠悟が以前言った『泣きたくなるほど甘い香り』が感じ取れた気がした。
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