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番いたい、と思った。 このままうなじを誠悟に噛まれて一生彼に縛りつけられたい。 他の誰とも愛することを封じられ、永遠に誠悟のオメガとして生きていきたい。 誠悟の熱い息が首筋にかかる。 きっと誠悟も鈴蘭と同じように感じているに違いなかった。 うなじを隠す髪の毛をかき分け鈴蘭は肌を出した。 「誠悟っ……、名前、名前を呼んで……!鈴蘭、って、呼んで……」 かかる息の湿度が増した。 噛まれる、そう思った時、うなじが誠悟の体温に包まれた。 「……誠悟?」 自分のうなじを指先で触れてみると、そこは誠悟の手のひらで覆われている。 誠悟は逆らえないほどの本能に支配されながらも、鈴蘭のそこを優しく守っていた。 噛んで欲しかったのに、なんで。 がくがくと全身を揺さぶられながら鈴蘭は涙を流した。 鈴蘭の心も体も誠悟のものなのに、なぜ彼は番ってくれないのだろう。 誠悟の優しさと覚悟の揺らぎが悲しい。 もっと強い想いで、本能で、誠悟のものにして欲しかった。 傷を負った獣が苦しむような息づかいがする。 誠悟の手に触れる指先に、何か(ぬめ)りを感じ鈴蘭は自分の指先を見た。 鮮やかな赤い色。 それは誠悟が流した血の色だった。
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