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誠悟は自分の手の甲に歯を突き刺していた。
そこまでして番うことを拒む彼。
いつか、近い未来番になると約束したのに。
なぜ今、その決断を下そうとしないのか。
彼の弱くて脆い何かがそれを許そうとしないのだろうか。
鈴蘭は誠悟の体の下で、ゆっくりと仰向けになった。
「あっ、うぅ……」
昔、学校で教わったアルファの体の仕組み。
射精が完了するまでそこから抜けきらないように昂ぶりの一部がこぶのように膨れあがる。
決して鈴蘭の中から抜け出そうとしない誠悟の形を感じながら、鈴蘭は誠悟と体を向き合った。
「誠悟、これで、大丈夫だよ」
うなじをシーツに押しつけた。
最初からこうしておけばよかったのだ。
噛まれたいと思うのは鈴蘭のエゴなのかもしれなかった。
「鈴……、ごめん……」
誠悟の手が鈴蘭の頬を撫でた。
垂れた血が頬を汚す。
「いいよ」
誠悟の体に腕を回しそっと引き寄せると、再び律動が始まった。
「んっ!んぅ、んっ」
今度は誠悟の口をキスで塞ぐ。
ガリッと肉がちぎれるような音がして、口内に鉄の味が広がった。
誠悟が鈴蘭の唇を噛んだのだ。
近すぎてぼやける視界の中で、誠悟の瞳が涙に濡れていた。
噛みたくないのに噛んでしまう、自分の中のアルファという性に翻弄される誠悟。
誠悟はうろたえながら顔を遠ざけようとした。
しかし鈴蘭はぐっと強く誠悟の頭を引き寄せた。
誠悟になら唇を噛みちぎられてもいいと思った。
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