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目覚めるとすっかり部屋は暗くなっていて、窓からは街灯とよその家の明かりがほのかに射し込んでいた。 誠悟の腕に抱かれながらすやすやと穏やかな寝息をたてる顔を見た。 どんな夢を見ているのだろう。 幸せな夢ならいいな、と誠悟を起こさないようにそっと彼の腕の中から抜け出した。 立ち上がると誠悟の出したものが流れ落ちた。 アルファが一回に放つ精の量は、ベータやオメガよりも遙かに多く、それは鈴蘭の腿を濡らした。 まともに巡らない思考の中であれほど番になることを拒んだくせに、鈴蘭の中で精を放った誠悟。 きっと後になって後悔するのだろうな、と思うと悲しくなる。 完全に二人ともヒートしていた。 貪り食うみたいなアルファとオメガの性交は、確実な妊娠をもらたすというのに。 理性と本能がせめぎ合って、正確な判断ができなかったのだろう。 脱ぎ散らかした服を拾い集め、ふと、誠悟の勉強机に視線を移した。 数冊の参考書と文庫本とノート。 その中の一冊に目がとまった。 それは、無理矢理に番にされたオメガのノンフィクションものだった。 悲しいことにそういった事件は後を絶たない。 オメガも被害者ならば、オメガのフェロモンに逆らえなかったアルファも被害者なのだ。 「違うのに」 鈴蘭は小さく呟いた。 彼らと鈴蘭達は違うのに。 机の上に置かれていたブロックメモに鈴蘭はペンを走らせ部屋を出た。
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