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他人様のお宅で行儀が悪いと申し訳なく思いつつ、洗いっぱなしで置かれているコップに水を汲み、抑制剤のタブレットとアフターピルを流し込んだ。
ひと思いにコップの水を全て飲み、ふうと息をつく。
その時、廊下に人の気配を感じ頭を上げた。
「あれっ?」
声を上げたのはどことなく誠悟に似た顔をした、彼の父親だった。
「あっ、お、お邪魔してます」
下着と制服のズボンはかろうじて身につけていたが、上半身は裸で、誠悟が散らしたいくつもの口づけの跡が白い肌を赤く染めている。
鈴蘭は身をかばうように腕を交差させ、そそくさと制服のシャツを拾い上げた。
「いやあ~、タイミングの悪い時に帰ってきてごめんね?」
「い、いえ……」
誠悟の父は少しからかうようにキッチンに入った。
シンクには鈴蘭が使ったコップと薬の梱包材が残されいる。
誠悟の父はそれを手に取った。
「抑制剤に……、アフターピルか。君、オメガなの?」
さすが医者とでもいうべきか、薬品名を見てすばり言い当てられた。
「はい……。ごめんなさい……」
悪いことをしてしまったという罪悪感がむくむくとわき上がり、鈴蘭は頭を下げた。
「なんで謝るの?」
「だって、その……、お父さんに言わないで勝手なことしちゃって……」
上手く言葉が出ず小学生のような謝罪に、誠悟の父は思わずというように吹き出した。
「ははっ!そんなこと、いちいち親に許可取ってる子なんているのかなあ!?」
おかしくて堪らないというふうに笑われ、鈴蘭は首まで赤くなってしまう。
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