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誠悟の母は専業主婦だった。いつも誠悟の帰りを出迎えてくれた。家事を完璧に行い、父親の留守を守るのが母の人生だと、誠悟は信じて疑わなかった。 手紙には誠悟への懺悔の言葉が羅列されていた。遊びに行く約束も忘れ、誠悟はぼんやりとソファーに座っていた。 突然部屋の照明が灯り、もうすっかり夜になっていたのだと気がついた。 「お母さん?」 目をしばたたかせながらリビングのドアを見ると、そこに立っていたのは父だった。 「ねえ、お母さんは?」 父親は痛ましげな顔で誠悟を見た。 「お母さん、帰ってこないの?」 手紙にはなぜ母がこの家を出て行ったのか、その理由について一切書かれていなかった。 「ごめんな、誠悟。きっと……運命だったんだよ」 運命。運命なんかで父と自分は捨てられたのか。 冷蔵庫に、母が手作りした総菜がぎっしりしまわれていた。冷凍庫にも同じようにおかずの入ったタッパーウェアが隙間なく詰められていた。 それがなぜか、もうこの家に戻らないという母の決意の表れに思えた。
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