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「こんばんは、ご婦人方。今夜もとても美しい」 伏見は優秀な秘書であり、昔は星崎のショーモデルだった男だ。 優美に星崎のタキシードを着こなし、妖艶な笑みをまき散らしている。 この場に集う女性達のハートをその笑みひとつで鷲掴みにしてしまった。 伏見の登場で鈴蘭たちの周りにまた招待客達が集ってきた。 こんなに注目されることは生まれて初めての鈴蘭は、じっとりと首筋に汗が浮いてくるのを感じた。 そんな鈴蘭をちらりと見て、伏見はそっと鈴蘭に耳打ちした。 「汗をかいてはいけません。見苦しい」 「はい…」 「それと表情が強張っていますよ。もっとにっこりと微笑んで」 緊張でガチガチの鈴蘭に、伏見はできて当たり前のように課題を押しつける。 周りの人間はみんなかぼちゃかジャガイモだと思いなさい。 しぐさの練習中にそう伏見が言った言葉を思い出し、鈴蘭は教え通り唇に笑みをのせた。 鈴蘭が表情を作るのを見て、伏見は満足げに少し頷いた。 「今度発表されるパルファムは鈴蘭をイメージしたものなんですよ」 伏見にそっと背中を押されて、鈴蘭は一歩前に進み出た。 すると鈴蘭を取り囲むように女性達が集まってくる。
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