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「今日はドレスじゃないんだ?まあ、そりゃそっか……」 レオは鈴蘭の頭のてっぺんから足の爪先までをじろりと見回して、何か含みを持たせたような言い方をした。 「そりゃそうか、って……?」 いつも鈴蘭がこのような場に女装で出席していることを知っているようなのにも驚いたが、それよりも彼の言い方が引っかかる。不安げな鈴蘭の顔をレオは不思議そうに見返した。 「ん?何も知らないの?」 「……ええ……」 鈴蘭が小さく頷くと、なぜかレオは憐れみを感じさせるような大げさなため息をついた。そしてスマートフォンを操作すると、ファッション雑誌のサイトを鈴蘭に向けた。その雑誌はファッションに疎い鈴蘭でも名前くらいは知っているくらい世界的に有名なものだった。 「ここの編集長が星崎の売り方を批判したんだよ」 「え?」 「とあるブランドでは男性のオメガに女装させ、彼をブランドのアイコンとして利用しているようだが、甚だ前時代的である、ってね」 ファッション界に影響力のある彼女の発言に、セレブ達もこぞって批判をし始めたというのだ。ブランド名こそ特定していないが、身内のオメガの名前をつけたパルファムを売りにしているのは星崎だけだ。そして、一族のオメガに女装させ、ブランドのアイコンとしているのも。
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