9

5/15
前へ
/194ページ
次へ
レオに頭を下げたあの日からもう七年も経つのか、と鈴蘭は首都高速からの景色を眺めた。高速道路を取り囲むように建つビルディング。その屋上に様々な企業の看板広告が掲げられている。 その中の一枚を鈴蘭はじっと凝視した。 『POLARIS』と星の名前がつけられたブランド。星空のような濃紺のコートを着た女性モデルがじっとこちらを見つめている。 それは鈴蘭が立ち上げたブランドだった。 七年前、レオに『門扉を広げる』というアドバイスを受け、鈴蘭はもっと多くの人達に星崎の服を買ってもらえないかと考えた。 一着数十万円もするパーティー用のワンピースではなく、もっと気軽に日常着ることの出来る服を。単価は安くなるが、購買層は確実に広がるはずだ。 「ふうん……、いいんじゃない?」 鈴蘭がそう提案するとレオは面白そうな顔をして笑った。レオに後押しされた気分になり、鈴蘭は意気揚々と父親を説得しにかかったが、その案は渋い顔をした父に却下されてしまった。 今まで築き上げてきた星崎ブランドのイメージを穢すことになるのでは、というのだ。しかし落ちぶれようとしているブランドにイメージもへったくれもない。 しかし星崎の未来を案じた鈴蘭の兄と姉が、鈴蘭の見方についた。そして鈴蘭達兄弟で立ち上げたのが『POLARIS』だった。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1989人が本棚に入れています
本棚に追加