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病院が併設されている医科大学の駐車場に車はとまった。本当なら鈴蘭も高校を卒業した後、大学に通うはずだった。
もの珍しくてきょろきょろしていると、「お待たせしました」と声がかけられた。耳に懐かしいその声。昔より少し低く響いたが、間違いない、その声は。
「未知……」
振り向くとあの頃の面影を少し残した、しかし立派な青年へと成長した未知が立っていた。びしっとビジネススーツを着て、ふわふわだった髪の毛を後ろに撫でつけている。
「あ……、鈴蘭……?」
「未知……、未知……!!」
人目もはばからず、鈴蘭は未知を抱きしめた。
「ちょっ……、苦しいよ。鈴蘭?」
未知は苦笑いをこぼしながらも、鈴蘭を優しく抱いてくれた。
「あれ?君達、友達だった?」
事情を知らないレオだけが、呆れたように目を丸くしている。鈴蘭は滲む涙を指先で拭い、改めて未知を見た。
「未知は大学で働いてるの?」
明らかに学生ではなくビジネスマン姿の未知は、自分より遙かに落ち着いた大人の雰囲気を醸し出していた。
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