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「いや、九条グループの製薬会社に勤めてる。ここの医大と共同開発で新薬開発してるんだけど、今日はレオに頼まれて案内役として馳せ参じたんだ」 「そっか……。未知、九条さんのもとに戻ったんだね」 最後にあんな別れ方をして、未知のことはずっと気がかりだった。鈴蘭にとって、未知はいつまでも小さな王様でいて欲しかった。目の前の未知はもうあの頃の小さな王ではないけれど、きっと九条を背負って立つ男になるのだろう。 しかし未知は緩く首を横に振った。 「もう僕は九条未知じゃない」 「え……、どういうこと……?なんで……」 九条翁は未知の勝手を許さなかったのだろうか。血は繋がっていなくても本当の孫以上に愛しているようだったのに。一度の過ちで未知は見捨てられてしまったのか。 戸惑う鈴蘭へ、未知は自分の左手をかざして見せた。 「今は、松原っていうんだ」 未知の左手の薬指にシルバーのリングが光っていた。 「未知……!」 「鈴蘭。あの日僕をみつけてくれて、ありがとう。鈴蘭がみつけてくれなかったら、僕は今もあそこで落ちぶれていたと思う。信頼できる人と出会って恋を知って、こうやって今まっすぐに立っていられるのは、──全部鈴蘭のおかげだ。ありがとう」
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