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「未知……、おめでとう……!おめでとう!」
鈴蘭はいっそう強く未知を抱きしめた。
「あはは!苦しいよ!」
快活な笑い声から、今、未知がとても幸せな人生を謳歌しているとわかる。鈴蘭は未知の肩口に顔を埋め、喜びの涙を流し続けた。
「ねえ。感動の再会はそれくらいにして、僕のことも思い出してもらいたいんだけど」
笑いを含んだレオの声で我に返り、鈴蘭はやっと未知を離した。
「ごめんね、レオ」
鈴蘭は涙を拭い一歩退いた。
「いいえ。それよりもその新薬の説明を聞きに行きたいんだけど」
「ああ、そうだね。これからビジネスパートナーとしてのつきあいが始まるかもしれないんだから、気が済むまで見学して行っていただかないと、ね」
詳しい事情は聞かされていなかったが、どうやらレオは仕事の一環でここへ立ち寄ったらしい。部外者は邪魔になるだろうと、鈴蘭は車に戻ろうとした。
「待って、鈴蘭。よかったら構内の見学をして行くといいよ。学食や図書館、薬学部の温室なんかは一般開放してるから」
未知はそう言うと、後で研究員に案内させるから、と鈴蘭を空き教室へ押し込めて行ってしまった。有無を言わせないところは昔の未知を思い起こさせ、なんだか懐かしい気分になった。
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