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「あら、可愛らしい香り」 「これは、まあ…少し清楚すぎやしない?」 鈴蘭がつけてきた香りを間近で嗅がれて、羞恥のせいか身体がどんどん火照ってくる。 体温が上がれば香水はさらに香りを増した。 星崎家に嫁いできた初代のオメガは、名前をローズという。 彼女の名前にちなんで夫となった男は薔薇の香りの香水を売り出した。 それは星崎を代表する香りとして知れ渡っている。 その後、星崎家に生まれるオメガには植物の名前が与えられ、その名前の香水がシリーズで発売されている。 前回のオメガは椿。 椿をイメージした香りは、少し甘くクラシカルなイメージの香りで爆発的に売れた。 そして次の新作は鈴蘭。 高原に咲く鈴蘭をイメージした香りは、瑞々しく清楚なフローラル系の香りだ。 「ええ、とても純潔の乙女のような香りでしょう?」 固まる鈴蘭に助け船を出すように伏見が話す。 「どんな一夜の火遊びも、この香りを身に纏いさせすれば、全て覆い隠してくれることでしょう」 「あら…!ふふふ…」 伏見の冗談に場が和む。 女性達の話題は星崎の新しいパルファムへと移り変わり、鈴蘭はほっと体の力を抜いた。
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