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初めての発情期をむかえてから、そのサイクルは安定していたのに。突然襲ってきた体の疼き。鈴蘭は自分の体を両腕で抱え込むように小さく身を丸めた。
油断していた。先々週発情期を終えたばかりで、抑制剤は車の中に置いてきてしまった。
「どうして……」
そしていつもと違うのは、胸を焼き尽くすほどの人恋しさに思考が支配されていることだった。
「誠悟……、誠悟……!」
抱いて欲しい。狂ったように中を穿って欲しい。誠悟が欲しい。
伏見を呼ぼうとしてスマートフォンに手をかけたが、彼もアルファだ。鈴蘭のフェロモンに冒されて間違いが起こってはならない。
そうだ、椿を呼んでもらおう。未知でもいい。とにかく鈴蘭のフェロモンに影響されない誰か──。
スマートフォンのロックを外した瞬間、教室のドアがノックされた。
「あ……」
未知が呼んだ研究員が鈴蘭を迎えにきたのだ。待って、と言おうと唇を開いた。でも飛び出した言葉は自分でも予想外のものだった。
「誠悟……!」
わかる。ドアの向こうに誠悟がいる。運命の番がいる。
鈴蘭はよろけながら椅子から立ち上がった。
「鈴蘭」
開かれた扉の向こうから、愛しい人が顔をのぞかせた。
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