10

5/10
前へ
/194ページ
次へ
オメガに生まれてよかった。誠悟と運命で繋がれていてよかった。この広い世界で、たったひとりの運命の番に出会えて、よかった。 のどの奥がつっかえて、ふんばらないと涙がこぼれそうになる。突然うつむいた鈴蘭の顔を、誠悟は心配そうにのぞきこんだ。 「鈴蘭……?」 「せ、いご……」 「うん……?」 「はやく……、早く、誠悟の部屋に行こ……」 こんな時に、抱いて欲しいなんてはしたないだろうか。でも、胸が愛で満たされて、そうしたら身体の内側を誠悟で満たして欲しくなった。 再び誠悟と恋を始めてから、まだ鈴蘭達は体を繋げていなかった。十代のような幼く清い恋からリスタートしたのだ。 誠悟と再会して二ヶ月。高校最後の日に経験した快感の残り火が、鈴蘭の欲望を煽っていく。 「お願い……。今夜は僕を、離さないで……」 震える指で誠悟の服を掴んだ。その指に重なる誠悟の手も、鈴蘭と同じように小さく震えていた。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1990人が本棚に入れています
本棚に追加