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「鈴蘭さん、彼があちらでお待ちですよ。彼と一緒に九条さんのところへお顔を見せに行かれてはどうですか」 伏見の視線の先には、女性達の輪の外で大人しく柔和な笑みを浮かべてこちらを見ているパートナーの彼がいた。 「はい」 「くれぐれも粗相のないように」 伏見に促され、鈴蘭は輪を抜け彼の元へ戻る。 「あの、すいませんでした」 一緒に来たのにすっかり彼のことを放りだしていたことに謝った。 「いや、いいんだ。僕は君が話題の中心になることに優越感を感じるんだから」 星崎のオメガを伴って出席するということがステイタス、と彼は付け加えて言った。 聞けばこの御曹司は鈴蘭の学校の先輩にあたるらしい。 「君のことは僕たちの学年まで知れ渡っていたよ。誰が君をパートナーとして連れて歩けるか。初めてのお相手が僕で本当に鼻が高いよ」 「そうですか…」 そんなふうに知らないところで自分に注目が集まっていたなんて。 鈴蘭は彼に教えられるまで知らなかった。 それだけ星崎のオメガに、特別な商品価値があるということだろうか。
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