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「でも…僕なんかより、おつきあいされている方はいらっしゃらないのですか?」 優しそうで上品な見た目の彼。 きっと恋人のひとりやふたりいるだろう。 「ああ…。今つきあっている彼女は大学の同期なんだけれど…」 優しそうな彼は急に歯切れの悪い話し方になった。 「その…彼女はとても優秀な才女なんだ」 「なら、その方と…」 「いや、それが…ベータ、なんだよね…」 「そう…なんですね…」 アルファの血にベータやオメガの血が混ざる事を良しとしない家で育ったのだろう。 特にベータは人類の七割以上を占める。 優秀なアルファの血が途絶えることのないよう、アルファの人達はアルファ同士で結婚し、純血のアルファの子孫を増やすことに必死だ。 なのにこんな華やかな場所にオメガの男を連れて来ることがステイタスなんて。 金持ちのアルファの考えることはよくわからない。 彼に付き添われるように広間の中心に進むと、そこには大勢の人達に囲まれている老人がいた。 老人といっても肌の艶もよく、まだまだ精力的な印象を与える男。 それが未知の祖父だ。 九条の背後には鈴蘭と同じように着飾った中性的な男女が数名控えていた。 それが九条のお手つきのオメガだということは、この場の全員が語らずとも知っていた。 首元を守るように飾られた煌びやかな宝石のついた首輪。 未知の祖父は彼らとは番ってはいないようだ。
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