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誠悟の首に両腕を絡めると、誠悟は鈴蘭の体をきつく抱きしめ返してきた。 「あ…、箱宮さん…」 いけないとわかっているのに、頭では求めてはいけない人だと思うのに、鈴蘭は必死に誠悟にしがみついた。 身体の芯に火が灯る。 「誠悟だ。誠悟って呼んで…」 鈴蘭の耳に誠悟の切なげな声が吹き込まれた。 「誠悟…、んっ…!」 教えられる通りに名前を呼ぶと、その唇をすぐさま誠悟の唇が塞ぐ。 「ん、んん…、ん…」 貪るように濃厚な息苦しいキス。 おやすみなさいでもこんにちはでも、好きですのキスでもなく、欲望が支配するキスだ。 もっと喉の奥まで繋がりたくて舌を伸ばし絡め合うと、その性急さにお互いの歯がぶつかってガチッと骨が音を立てる。 鈴蘭の身体の奥底に眠っていた蕾が、誠悟という存在を知ってゆっくり、ゆっくりと咲き始めた。 性の花は十七年の眠りから目を覚まし、甘い香りを誠悟に向けてまき散らした。 「この香り…」 唇同士が触れあう距離で誠悟が囁いた。 「君からどうしようもなく甘い香りがするんだ。甘くて甘くて、泣きたくなるほどの」 見つめ合う誠悟の瞳が色を変える。 オメガという性を求めるアルファの本能の色。 誠悟が自分を求めている。 そして自分も同じように彼を。 心臓の音は身体中にうるさく響き、膿んだような熱を孕み始める。 下半身は疼き、彼を求めて潤みだした。
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