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錠剤の抑制剤は発情を感じてすぐに服用すればそれを抑える効力を発揮するが、あの時鈴蘭は発情しきっていた。 ああなってしまうと錠剤は効かず、強力な注射を打つしかない。 体は眠りたいのに脳がいろいろと考えることを止めず、鈴蘭は眩暈を堪えながら体を丸めた。 「着きましたよ」 車は緩やかに停止して、目を開けると自宅の離れ、つまりオメガのために建てられた鈴蘭が住んでいる館の玄関が見えた。 「立てますか?」 由井がドアを開け、なるべく鈴蘭の体を揺らさないように支えてくれた。 「気持ち悪い?」 頷くと脳が揺れて、鈴蘭はその場で吐いてしまった。 「可哀想に…」 しゃがみ込む鈴蘭の背を由井の優しい手のひらが撫でてくれる。 今まであまり話したことがなかったけど、由井はきっと優しい人だと感じた。 吐くだけ吐くと少しすっきりし、やっと地面に足が着く感覚が戻ってきた。 窮屈なハイヒールは脱がされており、裸足の足裏に感じる土の冷たさが心地良い。
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