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玄関を開けるとホールにアンティークの猫脚ソファが置かれている。 由井はそこへ鈴蘭を横にすると、奥へと消えた。 一階の奥にはキッチンと浴室がある。 他にも書室とリビング、ダイニングへと続く扉があるというのに、由井は迷わず浴室へと続く廊下へと消えた。 もしかしてこの館に来たことがあるのだろうか。 鈴蘭はぼうっとする頭で考えたけど、自宅に帰ってきた安堵感にそれ以上考えるのを止めた。 しばらくすると白いほうろうの洗面器を手に由井が戻ってきた。 ソファの前に片膝をつくと、湯を絞った少し熱いくらいのタオルで足の裏を拭いてくれた。 「ドレスが汚れてしまいましたね」 「うん。いいんだ、別に」 鈴蘭は目を閉じて体の力を抜いた。 足を綺麗に清めると、また由井に体を支えてもらいやっとの事で二階の自室までたどり着いた。 体をベッドに投げだし、やっと安堵の息を吐く。 「由井さん、どうもありがとう」 まだ軽い眩暈を感じるがもうこのまま動ける気がしない。 鈴蘭は仰向けになったまま、由井に礼を述べた。
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