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一旦部屋を出た由井だったが、コンビニの袋と銀色のアタッシュケースを手に戻ってきた。 「飲めますか?」 由井はそう尋ねると、スポーツドリンクのペットボトルを白いビニール袋から出しキャップを捻ってくれた。 ご丁寧にストローまで用意されている。 鈴蘭は重い体を起こし少しだけ喉を潤した。 「由井さん、もう帰っていいよ…」 再びベッドに横たわり由井を見上げた。 「いいえ、その窮屈そうなドレスを着替えなければいけません」 鈴蘭の背中のファスナーに由井の指先がかかり下ろされると、くびれのない胴に無理やりウエストを作るために巻かれたコルセットが姿を現す。 昔は紐で編み上げていたようだが、鈴蘭が着けているものは三列ものフックで前面を止め強力な締めつけで体型を作り上げるものだ。 「こんなもの……、苦しいに決まっている…」 由井が上から順番にフックを外していく。 徐々に広がる解放感に、やっとのことで肺の隅々まで空気が入ってくる。 「女性の美への執着とはものすごいものですね。こんな鎧のようなものを一日中身につけるなんて、そこまでして美しく見せたいものでしょうか」 「そんなの、わかんないよ…。男だもん…」 由井が呆れるように言った言葉がまるで自分に向けて放たれているようで、鈴蘭はそっぽを向いて拗ねたような口調になってしまった。
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