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あまりの恥ずかしさとみっともなさに鈴蘭はクッションから顔を上げることができずにいた。 その間に由井は再び部屋から出て、しばらくしてまた戻ってきた。 「ちょっと失礼」 鈴蘭の頬に手を添え顔の角度を変えさせると、由井はシートタイプのメイク落としで鈴蘭の顔を拭う。 メイク落としのシートが肌色やマスカラの黒で汚くなっていくのを鈴蘭はぼんやりと見た。 由井は新たに作ってきた数本の蒸しタオルのひとつを手に取ると、ぐいぐいと鈴蘭の顔を拭いた。 幼い頃、泥遊びをして帰宅した鈴蘭の顔を母が苦笑いでこんなふうに拭ってくれた事を思い出す。 由井は口元に母性のような笑みを浮かべ、汚れた鈴蘭を清めてくれた。 うなじを守っていた真珠の首枷が外され、首から胸元そして脇下へと由井は順にタオルで拭った。 優しい手つきにすっかり安心しきった鈴蘭は、全てを由井にされるがままに任せた。 下着もあっさり脱がされて、新しい蒸しタオルでそこも拭われた。 後ろの方までタオルで綺麗に拭き取ると、由井はタオル地のガウンで鈴蘭の身を包んでくれた。 由井はベッドの端に腰掛けると、自分の腿に鈴蘭の頭を乗せ、髪をまとめていたヘアアクセサリーやピンを毛が絡まないように丁寧に外していく。 下から見上げる由井の顔は慈愛に満ちていて、鈴蘭は子猫のように由井の足に頬を擦りつけた。 由井からは清潔な匂いがした。
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