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夢を見ていた。 夢の中で鈴蘭は小学生で、高校生の椿が出て来た。 夢を見ながら、ああこれは夢だなあ、と思う。 自分は過去の夢を見ているんだ、と。 あの頃、椿は時々学校を休んで離れに引きこもる事があった。 今にして思えば発情期で、外出するのを控えていたのだろう。 椿の館には鈴蘭の姉も兄も行くのを禁止されていた。 鈴蘭だけが自由に出入りを許されていて、まるで自分が椿の特別になったような気がしていた。 学校の授業で性教育を受けた。 アルファとベータ、オメガの体の仕組み。 椿がオメガであるということを知っていたがそれがどういうものなのか、その日初めて詳しく教わった。 自宅に帰るとすぐに本館のホールにランドセルを放り投げ、椿のもとに行こうとした。 「待って、鈴蘭!これ、椿にお見舞いって渡してくれる?」 珍しく明るいうちから家にいた母親に外国のクッキーの箱を渡された。 「ママも一緒に行こうよ!」 鈴蘭は母の手を引いたが、母は困ったような笑みを浮かべ首を振るだけだった。
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