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この離れがオメガのための館であることは幼い頃から知っていて、椿がオメガである事もわかっていた。 「あのね、アルファとオメガが結婚する事を番(つがい)っていうんだって。だから僕、大きくなったら椿ちゃんと番になってあげるね」 椿は鈴蘭の初恋だった。 大きくなったら椿と結婚する、と幼稚園児の頃から宣言していたし、それを聞いた椿はいつもにこにこと微笑んでくれていた。 「そうか、ありがと」 その日も椿は笑顔でそう言った。 あの頃の鈴蘭は自分がアルファであると信じて疑っていなかった。 星崎のオメガには花の名前が与えられる。 自分にも白くて可憐な花の名前がつけられているというのに。 夢を見ながら鈴蘭は自分が涙を流しているのに気がついた。 わんわん泣きわめきたいのに、眠っているので体がびくとも動かない。 胸が苦しい。 大声で泣いて泣いて、この苦しさを吐き出してしまいたい。
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