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「発情期は…、こればかりはどうしようもないよ。彼の方もオメガの発情を近くで見るのは初めてだったみたいだし。まだ高校生なんだ。オメガに引きずられてヒートになっても仕方ないよ」 「うん…、でもね、椿ちゃん。僕、発情する前から彼が欲しくて堪らなかったんだ…」 そう、あの突然の発情期は誠悟と出会ってしまってから、その出会いがきっかけであるかのように始まった。 まるで鈴蘭と誠悟が運命で結ばれているかのような、そんな発情だった。 「椿ちゃんは昔僕に、運命なんてないって言ったよね。それって本当?運命の番なんて本当に存在しないと思う?」 鈴蘭は椿の腕に身を寄せ、その瞳を見上げ尋ねた。 椿は眉根を寄せ、しばらく鈴蘭の瞳を見返していたが、溜息をついて首を振る。 「俺は運命よりも、もっと愛している人がいる。オメガとアルファにとって、運命でない人を愛するという事は自分の運命に抗うこと。俺はもし運命の番が現れたとしても、今好きな人を選びたい。だから鈴蘭…、運命なんて──ないんだよ」 椿は自分に言い聞かせるように、苦しげな様子でそう言った。 そんな椿に向かって、運命の番を求めるこの気持ちを、これ以上口にするのは憚られた。
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