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番うということは、たった一人のアルファにオメガの人生が縛りつけられるという事だと思う。 番のいるオメガが他の人間をその体に受け入れると、それこそ昨夜鈴蘭が経験したような強烈な眩暈や吐き気をもよおしてしまうらしい。 しかし番うことはデメリットばかりではない。 もしオメガが発情したとしても番以外のアルファやベータにそのフェロモンは作用しなくなるというのだ。 本当に心から愛する人ならば番ってみたい、と鈴蘭は思っていた。 そんな夢みたいな事を考えるのは、自分がまだ世間というものを知らないからだろうか。 「まあ…いつかはね。番になれたらいいよね」 椿はまた鈴蘭の質問を曖昧に誤魔化して、テレビの電源を入れた。 たまたま合わさっていたチャンネルでは今週のニュースのハイライトを放送している。 『抑制剤を服用する義務を怠ったオメガの女性と、ヒート状態で無理やり番ったアルファの男性の事件の裁判ですが、オメガの女性に有罪の判決がくだりました』 「えっ…」 鈴蘭は女性アナウンサーの声に、画面に釘付けになる。 この裁判は、仕事が忙しく発情期が来るのを失念していたオメガのOLが職務中に発情期に見舞われ、同僚のアルファに襲われた事件だった。 彼女が勤めていた会社はブラック企業で、毎日の長時間残業の疲れでつい抑制剤を服用するのを忘れてしまっていたらしい。 そして同僚のアルファの男性と二人きりでの残業中、彼女の発情期は始まった。 そのフェロモンにヒート状態となった同僚に、彼女は無理やり番われてしまったのだ。
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