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オメガの女性は長時間の残業を課した企業と、無理やりに番にされたとアルファの男性のことも訴えた。 すると男性は、抑制剤を飲まなかった彼女の事を訴え返したのだ。 彼女の言い分は、会社には発情サイクルを忘れるほどの残業をしなければいけない状況においつめられた。 そして男性には、彼女がオメガであることに常々見下した態度を取っており、事件の起こった日も彼女が抑制剤を飲みに休憩に行こうとするたびに、「これだからオメガは」とプレッシャーを与え続けたというのだ。 しかし結果は発情期のサイクルは定期的で安定していたにもかかわらず、抑制剤を飲み忘れたのは女性のミスだった、オメガのフェロモンに誘発されヒート状態になったアルファに非はなしと、男性の訴えは認められた。 ただし、企業は彼女に労働基準法を無視した長時間残業を社員に行わせており、その責任は負うべきとなった。 画面は判決当日の裁判所前の映像に移り変わり、オメガの人権平等を求める団体がデモを起こしていた。 「残念な事件だね。これでまた、オメガを雇用しようとする会社が減っていく一方だ」 椿は他人事のように軽く感想を述べたが、鈴蘭は強い衝撃を受けた。 昨夜、自分と誠悟はあのままだと確実に番っていた。 オメガの発情期がこんな事件を生んでいるなんて。 まるでそれが悪のように扱われている。 鈴蘭は食い入るように画面をみつめた。 しかし番組はタレントの熱愛報道へと話題が変わってしまう。 今まで無理やり番われるという事はオメガの方が被害者になるという事だと思っていたが、もしかして逆なのではないかと、鈴蘭は今、初めて気がついたのだ。
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