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あれは本当に運命だったのか。 熱っぽく鈴蘭を見た誠悟は、実はオメガのフェロモンにあてられただけで一ミリたりとも運命なんて感じていなかったとしたら。 伏見と由井が止めに入らなければ、鈴蘭と誠悟は加害者と被害者になっていたのではないか。 「初めて発情期を向かえた鈴蘭には、ちょっとショッキングなニュースだったかな?」 椿はそう言うとテレビの電源を切った。 「まだやっぱりね…、オメガへの偏見と差別はなくならないよね。でもね、鈴蘭、大昔はオメガが文明のカーストの頂上に君臨していたって話、知ってる?」 暗い表情の鈴蘭を心配してか、椿は殊更明るく話し始めた。 「え…、オメガが…?」 「そうだよ。ちょっと前に古代の遺跡が発掘されたニュース見た?」 鈴蘭は首を振った。 バラエティや音楽番組、ドラマなどは見るけれど、この離れで一人で過ごすようになってからチャンネルはニュースに合わされた事なんてない。 「来年は鈴も受験生なんだから、少しはニュース番組も見るべきだよ」 呆れたふりをして椿は軽く鈴蘭のおでこを小突いた。 「ねえ、それで?オメガが頂点ってどういう事?」 「それがね、王の墓を掘り返してみたら綺麗なミイラが出て来てね、なんと!そのうなじに複数の噛み痕があったっていうんだ!」 「えっ…、それって」 「そう、王様はオメガで番がいたんじゃないかって事!」 椿は手品のネタばらしをするみたいに、両手を広げて笑っている。
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