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「俺達、星崎のオメガはこの一族にとってとても特別な存在として扱われるよね」 鈴蘭は首を縦に振る。 星崎家において、生まれてくるオメガは大切な商品になるのだ。 未知の祖父のパーティーで、星崎の名を聞いた女性達が急に色めき立ったのは衝撃的だった。 「これからは鈴蘭が星崎の新しい顔になる。それは次のオメガに代替わりするまで続くかもしれない。その間、親戚達は鈴をこの館に閉じ込めようと躍起になるだろう。嫌な事を強いられるかもしれない。でもね、鈴…俺達は星崎に飼われる小鳥じゃない。この小さな館を鈴はいつでも捨てていいんだよ。わかった?」 椿は悲しそうな顔で鈴蘭を見ている。 確かに女物のドレスを着るのは嫌だったけど、そういう事を言っているのではない気がする。 「嫌な事って…?」 未知の祖父に悪い噂があるように、まさかこの一族にも何かあるのだろうか。 椿の真剣な表情に、鈴蘭の背筋を冷たい汗が流れた。 「それは今の星崎家がオメガをオメガのように扱いかねない、って事だよ」 オメガをオメガのように──、椿の言いたい事の本質は見えなかったが、それがとても良くない事だという事はわかる。 「……わかった」 鈴蘭は小さく、でもしっかりと頷いた。
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