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一週間の休みを経て、鈴蘭は久々に登校した。 教室に入り自分の席につくと、隣の席の生徒に声をかけた。 「おはよう」 「ああ…、おはよ…」 いつもと様子が違う、どこかよそよそしい返事。 隣の席の彼は鈴蘭から顔を背けると、他の友人達の輪へと向かった。 「………」 ぐるりと教室を見回すが、誰一人鈴蘭と目を合わせる事はない。 いつもなら一週間も休んで登校すれば、何だかんだと声をかけてくるものなのに。 その時、教室の入り口から未知が姿を現した。 結局未知とはあのパーティーの夜以来会っていない。 未知の祖父からは見舞いの品が送られてきたけれど、未知からはメールのひとつもなかった。 鈴蘭が送った謝罪のメッセージは既読マークはついたものの、それ以上のやり取りはない。 きっと未知は怒っているんだろう。 「未知、おはよう…」 席についた未知の傍へ寄り、声をかけた。 「おはよ」 未知は全く鈴蘭を見てこない。 「ごめんね、未知。あんな事になっちゃって…」 許してくれなくてもちゃんと謝ろうと思った。 「本当にごめんなさい。未知が楽しみにしてきた夜なのに…、僕が…」 すると未知はきっと鈴蘭を睨みつけて口を開く。 「あんな事って?」 「え…?」 「あんな事ってどういう事?ああ…もしかして、鈴ちゃんが厭らしいオメガのフェロモンで僕の好きな人を誘惑した事?」 「あの…」 「娼婦みたいに女のドレスを着て、厭らしく彼に抱きついてキスして、セックスしようとした事だよね」 未知の声は教室中に響き渡った。
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