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教室中の視線が鈴蘭と未知に集中する中、未知は立ち上がり鈴蘭の耳元に顔をよせた。 「あの後ちゃんと治まった?うちの秘書は次の日まで帰ってこなかったみたいだけど、もしかして彼に慰めてもらった?」 口元を歪に歪めた笑みを鈴蘭に投げかけて、未知は教室から出て行ってしまった。 しばらくその場から動けずにいると、恐る恐るといった手つきでそっと肩を叩かれた。 「大丈夫?」 見ると、大学教授を父に持つ学園内でもトップレベルの知能を持つ生徒である相馬だった。 本来ならアルファクラスに籍を置いていてもおかしくないくらいの学力を持つ彼は、ただオメガだというだけでこの教室に詰め込まれていた。 「彼は発情期を経験していないようだから、わからないんだよ。あの自分の意思ではどうしようもない衝動を」 「相馬くん…」 相馬はクラスの誰とも馴れ合うことをしない。 もちろん未知ともだ。 このオメガクラスのカーストは未知を頂点として構成されている。 クラス全員がさっきの鈴蘭達を見ており、小さな王様の怒りを恐れて教室中が鈴蘭を遠巻きに見ている中、相馬は鈴蘭を擁護するような発言をしてきた。 鈴蘭は彼の一番上のボタンまで留められたワイシャツの襟元を見た。 相馬の首には首輪はついていない。 しかし今の発言は、すでに発情期を経験した者でしかわからない、やり切れなさが含まれていた。
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