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「えっ、なんで?」 鈴蘭は目を瞠った。 誠悟は額にうっすら汗をかき頬を上気させて鈴蘭を見ている。 「今週は登校できるだろうと思って…。でもどこにも君の姿がないから相馬をつかまえて聞いてみた。君がこっちに歩いて行ったって」 誠悟は鈴蘭の隣に腰を下ろすと、にっこりと微笑みかけた。 急に間近に感じる誠悟の体温に、鈴蘭の胸は高鳴り始める。 「あ、うまそう。お母さんの手作り?」 鈴蘭が手にしている弁当箱を見た瞬間、誠悟の腹の虫がくうっと鳴いた。 「お手伝いさんが作ってくれるんだ…あの、よかったらどうぞ…」 弁当箱を差し出すと誠悟は「いいの?」と尋ね、それに鈴蘭は小さく頷いた。 張り切って作ってくれた君代には申し訳ないが、もうこれ以上喉を通る気がしない。 さっきまでは悲しさと切なさから、しかし誠悟に会った瞬間から胸のどきどきでお腹までいっぱいになってくる。 「うまい!毎日こんな弁当食べられるなんてうらやましい」 「よかったら全部食べていいよ。僕はもうお腹いっぱいだから」 誠悟に弁当箱ごと手渡し、鈴蘭は足元に視線を集中させる。 そうでもしないとずっと目が誠悟だけを追いかけてしまいそうだ。 「そう?じゃあ遠慮なく」 誠悟はぱくぱくと海苔巻きを口に放りこんでいく。 弁当箱はあっという間に空になり、鈴蘭はそれをランチバッグにしまった。 「じゃあね…」 あまり長く一緒にいるのはよくない。 未知に対する裏切りになるし、それにもしまた発情しないとも限らない。 鈴蘭はベンチから腰を上げた。
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