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「未知の彼って…まさか俺?違うよ、俺は誰ともつきあってない…」 「でも…未知は箱宮君の事好きでしょう?」 「確かに…それっぽい事は言われたけど…でも俺は九条君を好きじゃない」 誠悟は鈴蘭の肩に手をかけ、下げた顔を上向かせた。 あの夜みたいに間近に迫る誠悟の瞳。 あっと思っているうちに鈴蘭の唇は誠悟の唇に塞がれていた。 薔薇の茂みで交わしたのとは違う、押しつけるだけの稚拙なキス。 でもその強さから誠悟の気持ちが伝わってくる。 やっぱり誠悟の気持ちがわかる。 鈴蘭が想うように、誠悟も鈴蘭を想っている。 溢れる気持ちに逆らう事なんてできなくて、鈴蘭は誠悟の背に腕を回した。 好き、好きだ、誠悟の事が好きだ。 誠悟を前にすると彼の事だけしか考えられなくなる。 未知の怒りや、親友への裏切り。 わかっているのに、全てを捨てても彼が欲しい。 「やっぱり君から甘い香りがする」 唇同士をくっつけて、誠悟がそう囁いた。 「甘い香り…」 「うん…、わかるんだ。君はきっと俺の──運命の番」
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