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結局どうしても誠悟と離れる事ができなくて、午後の授業には大幅に遅刻してしまった。 担当の教師に鈴蘭は、抑制剤の副作用がまだ残っているようだと嘘をついた。 「副作用なんて嘘だろう」 帰り支度をしていると、ぬっと目の前に相馬が立った。 「あの、心配してくれてありがとう」 相馬は少し怒ったような顔をしているが、きっと午後になっても教室に戻ってこない鈴蘭を気にしてくれていたのだと思う。 鈴蘭が礼を言うと相馬の頬が気持ち赤くなったのがその証拠だ。 「心配なんてしてないけどな。ただオメガにちょっかいかけてくる馬鹿な生徒もいるんだから気をつけろ」 「ふふ…。相馬君って優しいね」 思わず微笑みかけると、相馬は更に顔を赤くした。 今までクラスに馴染もうとしない相馬を、クールで他人に興味がない人物だと思っていたが、本当はそんな事はないようだ。 クラスメイトに省かれようとしている鈴蘭に、こんなにも優しく接してくれる。 相馬なら鈴蘭の話を笑い飛ばさず真剣に聞いてくれるような気がする。 「ねえ、相馬君。相馬君は運命の番って信じる?」 誠悟の事、相馬ならきっと馬鹿にせず聞いてくれる。 鈴蘭はじっと相馬の瞳を見つめた。
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