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発情期を向かえても相馬が首輪をつけていない訳。 それはすでに彼の人生に、唯一と決めた人がいたからだった。 一生消えることのない番の証を、鈴蘭は微動だにできずただ見つめた。 相馬は再び軽く鼻をならすと開いたボタンをはめ直した。 自分と同じくらいの年月を生きたクラスメイトの決断に、鈴蘭は言葉も発せないほどの衝撃を受けた。 「運命の番は存在する。オメガとアルファ、その全ての人間にかは知らないが、俺には確かに存在する」 真摯な瞳で射るように見つめ、彼ははっきりと断言した。 その瞳は、誠悟が鈴蘭に向けたのと同じくらいの確信に満ちている。 鈴蘭も誠悟の事を運命だと感じるけれど、こんなにも自信満々に言い切る事ができなかった。 それは親友を裏切る想いを持ってしまったゆえの遠慮と、オメガに生まれた事への自信のなさからだろう。 本当は、自分も誠悟に告げてみたい。 あなたは僕の運命だ、と。 「相馬君はすごいね…。僕にはそんな勇気はない…」 「勇気?この噛み痕の事か?それとも…、俺がすでに運命の番と愛し合っている事に対して…かな?」 相馬は全て見透かすかのように口の端を上げて笑った。
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