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「俺の番は、運命でなければ絶対に関わりたくないタイプの人間だ。それでも俺がやつと番うと決めたのは、俺が無駄な事が嫌いな人間だからだろうな」 「無駄?」 「そうだ。あいつの事を嫌だ、嫌だと思うけれど、どうしても引きよせ合う。一時は運命に逆らおうと躍起になったが…無駄だった。あいつを知ったその日から、俺は運命に囚われてしまったんだ。それは星崎もそうじゃないのか?箱宮を忘れるなんてできないのだろう?」 鈴蘭は思わず息をのんだ。 なぜ相馬は鈴蘭の運命の番の名前を知っているのか。 驚く鈴蘭の顔を相馬は面白そうに見つめてくる。 「箱宮が言ったんだよ」 「箱宮君が…」 「そう。お前の事を運命の番だと、やつはそう言っていたぞ」 誠悟が──、そう思うと心臓が押し潰されそうなほどに苦しい。 これが恋しいという事だろうか。 とくとくとく、と心臓が早鐘を打ち始める。 さっき会ったばかりなのに、またも誠悟を求める気持ちが胸の中で大きくなっていく。 シャツの胸元をぎゅっと握りしめるけど、この切ない苦しさは消えてはくれなかった。 「ほら。お前もそうやって箱宮の事を考えている──だから無駄だと言ったんだ。運命を知り、それに逆らう事なんて俺達にはできやしない。だったらさっさと番った方が無駄がなくて良いだろう。どうせ向こうも同じ気持ちなんだから」 やっぱり相馬の決断力は凄い。 世の中にアルファとオメガのカップルは存在するけれど、誰もが必ず番うわけではない。 結婚式で一生を誓っても、うなじに一生の疵をつける者は少ないのだ。
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