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「お前はきっと九条の事を気にしているのだろう?」 ずばり言い当てられ息を飲んだ。 そう、未知の事さえなかったら──きっと今ごろ自分はこの運命にすんなり身を委ねていたことだろう。 「僕の事は…いいんだ…」 悲しい気持ちで相馬を見た。 自分も相馬も同じオメガで、同じように運命の番と出会ったというのに、鈴蘭には相馬のような勇気は持てそうにない。 「お前はそうやって欲しいものを諦めるのか?」 今、誠悟を諦めてしまったら、多分鈴蘭はもう誰のことも愛せないと思う。 いや、わかるのだ。 どんな素敵な人と出会っても、きっと一生、誠悟を求める気持ちは消えやしないと。 だったら一人で生きていく方がいい。 誰かを誠悟と比べたり、誠悟の面影を重ねるような恋をするくらいなら、潔く死ぬまで彼を想い続けていよう。 相馬がこの歳で番になると決めたように、十七歳の鈴蘭も一生誠悟を想って生きると決めた。 「僕は…、僕の恋で友達が傷つくより…、一人でいるのを選ぶよ…」 自分に言い聞かせるようにそう告げた。 頭の中で誠悟の顔と、未知との楽しかった思い出が交錯する。 未知にあんな酷い言葉を言わせてしまったのは、やはり自分が悪いのだ。
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