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金曜日の昼休み、未知の話題は明日開かれる祖父の誕生日パーティーのことばかりだった。 内輪だけの親しい者だけが招かれる──そう聞くとこじんまりしたアットホームなパーティーを想像するが、実際はそんな規模では収まらないのを鈴蘭は知っていた。 たくさんの政治家、企業の会長社長役員達、華を添えるタレントやモデル、この国の上部の人間が集まってくる大規模なパーティーだ。 そのパーティーに鈴蘭も行くことはもう何ヶ月も前から決まっていた。 鈴蘭の一族は元を辿れば布問屋を商いとしていた商人の一族らしい。 それが時代が流れると共に、ハイクラスの人達が身につける衣装を制作する星崎ブランドとして名を上げた。 未知の祖父のパーティーでも星崎のドレスで着飾る人達は必ずいるはずだ。 だからといってただの高校生である鈴蘭には正式な招待状は送られてはこない。 鈴蘭の祖父はきっと招待されているはずだが、今、彼は海外で行われるショーの準備のため国内にはいなかった。 祖父の第一秘書が帰国してきたので、きっと祖父の代わりにご機嫌伺いで挨拶程度に出席するのだろう。 「僕のパートナーなんだけどね、とても素敵な人なんだよ」 うっとりとそう呟く未知。 招待された者達はほとんどの者がパートナーを従えて出席する。 「運命じゃなかったのが残念なんだけど」
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