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「お取り込み中のとこ悪いんだけどさあ、それ以上は俺のいないとこでやってくれるかな」 突然降ってわいた誰かの声に鈴蘭は誠悟からさっと離れた。 かさりと乾いた葉を踏む音がして、植え込みの向こうから鈴蘭達と同じ制服姿の男子が現れたのだ。 彼はぐんと両腕を上げ背中を逸らすと、大あくびをした。 「あ~~、めっちゃ寝た~…。今何時?昼?」 「伊奈(いな)…」 隣で誠悟が彼の名前を呟いた。 よく見てみれば伊奈と呼ばれた生徒は、誠悟と同じアルファクラスの生徒がつける深紅のネクタイをしている。 「同じクラス?」 尋ねると誠悟はちらりと鈴蘭を見て頷いた。 「いや~、昼寝してたらさあ、誰かが急におっぱじめようとしだすじゃん?慌てて出て来てみたら…まさかの箱宮君かあ~!」 伊奈は誠悟の隣に腰掛け、誠悟越しに鈴蘭に微笑みかけてきた。 「可愛いね。箱宮君の彼女?や、彼か~。ここの生徒だもんな」 じろじろと不躾な視線を投げかけられ、鈴蘭は少し身動いでしまう。 「ん~…?どこかで見たことある顔だなあ……」 眉間に皺を寄せ目を細める伊奈に、誠悟が「星崎の…」と言った。 「星崎~?星崎って何だっけ?」 「だからみんなが噂してるだろ。星崎ブランドの……その、オメガ……」 誠悟は非常に言いづらそうに言葉を発した。
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