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一週間の休暇を終えて、ついに未知が登校してきた。 「未知、おはよう」 鈴蘭は緊張しながら未知に声をかけた。 「…ああ、おはよ」 そっけないながらも未知はちゃんと言葉を交わしてくれる。 休暇の間に鈴蘭への怒りは少しだけ落ち着いてきたようだ。 「未知…、ちょっと聞いて欲しい事があるんだけど。その…、箱宮君の事で…」 誠悟の名前を出すと、ぴくりと未知の右眉が痙攣する。 「もういいよ」 さも聞きたくないと言うように顔を背ける未知に、鈴蘭は必死に食いついた。 「だめ…!お願いだから、聞いて欲しいんだ…!」 未知の服の裾を引き廊下に誘うと、未知は渋々といった様子で鈴蘭の後についてきた。 「箱宮君との事なんだけど…、僕、彼の事が好きなんだ…」 「はあっ!?何それ…!僕がいない間に何でそうなってるの!?」 「ごめん…。でも…、信じられないかもしれないけど、箱宮君と初めて会った瞬間にわかったんだ。その…、彼が運命の番だって」 申し訳なさに俯きそうになる顔を必死に上に上げた。 目の前の未知は信じられないものを見たかのように大きく目を見開いて、怒りに満ちた顔をしていた。 「運命の番ってどういう事!?彼は僕の方が先に見つけたんだ!僕のものを鈴ちゃんは横取りしようっていうわけ?」 未知は震える手で鈴蘭をぶってきた。 何度も何度も振り下ろされる手に耐える。 暴力なんて振るったことのない未知は、まるでだだをこねる子供のようにがむしゃらに腕を振って鈴蘭を叩き続けた。 「やめて、未知!誠悟はものなんかじゃない…!」 「誠悟って何だよ!もう恋人気取りでそんな呼び方してるわけ!?」 いつの間にか鈴蘭達の周りに人の垣根ができていた。
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