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「おい!何やってるんだ!やめろ、九条!」 何事かと見守るクラスメイト達を押し退けながら相馬が駆けつけ、鈴蘭と未知の間に入った。 「落ち着けよ、九条…!」 「はっ!?お前には関係ないだろ!どいてよ!」 「だめだ。周りを見ろ、九条」 相馬に腕を取られ、未知は息を切らせながら首を回した。 たくさんの好奇の目にさらされている状況に、未知はやっと自分自身を取り戻す事ができたようだ。 「……見世物じゃあないんだけど?」 不機嫌な感情を隠さずに未知が言うと、見物人達は慌てて解散していく。 未知は乱れた髪を手櫛で整えると、何事もなかったかのような顔をして鈴蘭に背を向けた。 「未知…。未知が許してくれなくても、僕、誠悟の事が好きだ…」 これだけは伝えておかなければならない。 未知は一瞬動きを止めたが、そのまま振り返らずに教室に入った。 もう未知とは友達になんか戻れないかもしれない。 自分がオメガだとわかった日から、未知の存在は鈴蘭の支えだった。 「おい、大丈夫か?」 相馬が顔を覗き込んで言った。 余程見ていられない顔をしているのかもしれない。 大切な友との友情の終わりに、鈴蘭は大声で泣きたかった。 でも泣くのはずるい。 未知よりも誠悟を選んだのは自分。 「大丈夫…」 口を真一文字に引き結び、鈴蘭はしっかりと頷いた。
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