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約束の日、未知が指定してきた場所はマンションの一室だった。 鈴蘭を迎え入れるために扉を開いた未知は一瞬にして不機嫌になる。 「ドレス着て来てって言ったよね」 「うん…」 肩にかけた星崎の大きな紙のブランドバッグの中身は椿の赤いワンピースが入っている。 赤いパーティードレスはかなり目立つ色をしており人目をひく。 結局鈴蘭はそれを着て外を出歩く勇気がなく、男物のジャケットにパンツという姿で未知のパーティーに訪れたのだった。 「入れば?それ、服でしょ。中で着替えなよ」 やはり未知は鈴蘭を許してくれるつもりはないらしく、じろりと睨めつけると部屋の中を顎でしゃくった。 「お邪魔…します」 いたって普通のマンションは玄関から続く短い廊下の奥にLDKに続くドアがあった。 扉の向こうからは若者達の喋り声が漏れている。 未知の後に鈴蘭が部屋へ入ると、ざっと視線が集中した。 「なあんだ。男じゃん」 同年代らしき男子が五人、かなり広いリビングでくつろいでいた。 全員カジュアルな恰好をしており、パーティーというより友達の家に遊びに来たというふうだった。 「こんにちは…」 見知った顔がないか確認するが誰一人知っている人物はいない。 かなりアウェーなこの状況に、鈴蘭は少したじろいだ。 「みんなお待たせ。彼が僕の言ってたオメガだよ」
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