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ぐいと背中を未知に押され、鈴蘭は部屋の中心に歩み出た。 じろじろと品定めするかのような視線にさらされる。 「女の子じゃなかったっけ?」 気怠そうにひとりがそうぼやいた。 「女の子なんて言ってないじゃない。可愛いドレスを着たオメガ、って言ったんだよ」 クスッと未知は鈴蘭の耳元で笑った。 「なのに、鈴。なぜドレスを着て来なかったの?」 ぞくっと背筋が震えるほどの怒りに満ちた声。 鈴蘭はドレスの入った袋の持ち手を握る手のひらに力を込めた。 「ドレスは持って来たんだけど…、でもそういうパーティーじゃないみたいだし…」 「僕に口答えするんだ?」 鈴蘭の肩に手をかけ、未知は鈴蘭の耳に息を吹きかけるように囁いた。 「大人しく僕の言うことをきいていれば許してあげたのに…。誠悟君のこともそうだよ。僕が彼に飽きるまで指をくわえて見てればよかったんだ。なのに泥棒猫みたいな真似をして。もう許してなんかあげない…」 未知はショップバッグから椿の赤いドレスを引きずり出した。 「未知っ…」 「さあ、鈴蘭。今すぐこれを着て、あの夜みたいに媚びるんだ。ここにいる皆は鈴の好きなアルファだよ?鈴の仕事は、娼婦みたいに女の恰好をしてアルファ達に媚びる事だろう?」 勢いよくドレスを投げつけられ、鈴蘭はよろけて床に膝をついた。
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