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「ねえ!みんな!」
倒れた鈴蘭なんか気にすることなく、未知はアルファ達に宴の開始を告げる。
「みんな、オメガと一回やってみたいって言ってたよね?あの子がみんなの相手してくれるから、好きなようにしていいよ」
「未知…!」
怒りに我を忘れた未知はゆっくりと振り返ると低い声で命令した。
「さあ、鈴。早くそのドレスに着替えるんだ」
いつもの未知じゃない。
鈴蘭の知っている未知は、わがままで王様みたいに振る舞うけど、でも鈴蘭に手を差し伸べて微笑んでくれた。
自分がオメガだと知ったあの日から、オメガでも堂々とそれを隠さない未知に憧れていた。
未知がいたから、未知が優しく笑ってくれたから、鈴蘭はオメガという性を受け入れられたのに。
呆然と、見下ろす未知を見つめていると、動揺する声が耳に届いた。
「好きにしていい…って…、なあ?」
「どうする…?」
「俺はいいや…。」
こそこそと相談を始めた連中を、未知は氷のような眼で睨んだ。
「僕を誰だと思ってるの?九条未知だよ?僕がやれって言ってるんだからさっさとやりなよ」
「でも…」
「でも?君達も口答えするんだ?わかってる?僕の機嫌を損ねるつもりなら、おじい様に言いつけてやる。君達の親の会社との取引も終わりかもね」
幼稚園児のような脅しだが、彼らにはそれでも十分脅威に値するようだった。
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