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訪問者が部屋の前についたのか、再びインターフォンが鳴らされる。 一人が玄関に向かいドアの開閉音の後、二人分の足音が鈴蘭達のいる部屋へと近づいてきた。 「あ、やっぱり」 聞き覚えのある緊張感のない声に、鈴蘭は目を開いた。 「い…なくん…」 仰向けに横たわる鈴蘭の真上から、伊奈が飄々とした様子で見下ろしていた。 「あ、未知。久しぶり」 のどかな伊奈の挨拶に、未知は酷く苛立った声を出した。 「直ちゃん。何しに来たの…」 成長した伊奈を、すぐにあの直己とわかっているところを見るに、未知はどうやら伊奈との再会を果たしていたらしい。 特に驚く様子もなく、未知はイライラと足の爪先で床を叩いた。 伊奈はそんな未知に向かってへらりと笑うと、ポケットから取り出したスマートフォンを操作しどこかへ電話をかけ始めた。 「もしもし?類?うん、やっぱり鈴ちゃんだった」 「直ちゃん、誰に電話かけてるの」 未知は伊奈へと詰め寄りスマートフォンを奪おうとするが、伊奈はそれを軽く躱して部屋番号を告げた。 「みんな、パーティーは終わりだよ。今からここに九条氏の秘書が来る。悪ふざけがバレたら大変だよ」 口調は軽いが伊奈は凄味をきかせた声を響かせた。 男達は仲間同士顔を見合わせると、さっさと帰り支度をして部屋を出て行ってしまい、部屋には三人だけが取り残された。 「直ちゃん、何勝手にやってくれてるの?」 「だってあいつらが話してるの聞いちゃったんだもん。未知が綺麗なオメガ連れてくるって。未知が自分より美人を連れてくるなんておかしいと思うじゃん。自分より優ってる者は大嫌いな未知がさ」 それにね、と話を続けながら、伊奈は鈴蘭に服を拾ってかけてくれた。 「類がいつも心配してたよ。未知との事も聞いたし、ね?」 「伊奈君…」
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