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伊奈は鈴蘭の体を抱え上げるとソファーまで運びそっと下ろした。 気持ちが落ち着いてくるとさっきまで消えていた恐怖が戻ってきて、カタカタと小さく震え始めた。 「大丈夫だよ。もう怖いことは起こらないからね」 子供をあやすように伊奈は鈴蘭の髪をなでた。 「ふっ…、くっ…」 ぼろぼろと涙があふれだし、喉の奥が詰まる。 未知は面白くなさそうにふてくされた顔をしていた。 伊奈の腕の中で疲れた体と心を休ませていると、玄関からドアの開閉音がして人が入ってくる気配がした。 「鈴蘭!」 真っ先に聞こえてきたのは誠悟の声。 鈴蘭は伊奈の腕から身を起こした。 「悪い。箱宮を拾ってきたから少し遅くなった」 誠悟に続いてやってきたのは相馬と由井だった。 「誠悟…」 名前を呼び腕を伸ばすと、誠悟はその手を取り鈴蘭の体をきつく抱きしめてくれた。 「鈴蘭…、遅くなってごめん…!大丈夫…な訳ないよな…」 悔しそうに誠悟は目を細めた。 「大丈夫…。大丈夫だよ、誠悟…」 一番望んでいた温もりを、鈴蘭は確認するように抱きしめ返した。 「未知さん、何をやっているんですか」 ピシャリと肌を打つ音がして、鈴蘭は誠悟の腕の中から顔を上げた。 由井が未知に詰め寄りその頬をぶった音のようで、未知は頬を赤くして驚愕の表情で由井を見上げている。
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